永遠の鎖 |
この地はかつて二人の友と別れた場所。過去の思いは確実に現在へと繋がっている。 けして断ち切れぬ鎖、ますます複雑に絡まり自身を捕らえる。鎖から逃れたいとは思っている、 しかし鎖に捕われていることを望んでるのも事実。 いったいいつからこの途切れる事の無い鎖に捕われていたのだろう。思えばハルモニアの手によって生まれた場所が存在しなくなった時、 紋章がこの身に宿ったあの時からこの永遠の生という「鎖」に捕われていたのかもしれない……。 フィレス城の片隅、普段誰もこないような場所にゲドは座り込んでいた。 先ほどまでの痛いほどに照りつけていた太陽はどこに消えたのだろうか。 今、空はどんより曇り今にも雨が降り出してきそうな感じだ。 天候の変化に気付いていないのか、ゲドはいつもの無表情をさらにかたくして何ごとかを考えているようだった。 そんなゲドの様子をワイアット、ジンバは声をかけるでもなくただ見ていた。50年前から度々見てきた光景。 理想主義者だったゲドがその理想の高さゆえに苦悩している姿。見なれているとはいえ、あまり見たくない光景だった。 ―思わず手を差し伸べてしまいそうなるから― ゲドがそれを望んでいないのは分かっている、一人で考えていたいということを… だからこそ思う。 「絶対一人にはさせてやらない」と ジンバは考え込むゲドの側へ近付いていった。きっと今回もまた下らない事を考えているのだろうと思いながら。 遠くから見えた光景以上にゲドは考えに没頭しているようだった。 50年前から変わらないこの場所、炎の英雄ライズが望んだ平和な場所。 確かにあの時友と共に戦い勝ち獲えた場所なのにこの胸にある思いはなんだろうか。 空白の感情、うつろな日々、世界が薄いまくに覆われているかのように感じられる。 あの時も同じだったのか………? 自分は表面上では嬉しさを装い、心の奥底にある空白の感情を隠していたのだろうか。 自覚が無いとは断言出来ない。きっと隠していたのは事実だろうから。どうにも行き場のない思いが交錯する。 (あぁ駄目だ……これでは変わらない) ゲドは考えを断ち切るかのように首を横振った。そして、いつの間にいたのかジンバの姿に気付いた。 「…………?」 ゲドの無言の言葉に見ていたジンバは呆れたかのような表情をうかべた。 その表情を不思議に思ったゲドは今度はちゃんとした言葉を口から紡いだ。 「…………何か用か…?」 本当にちゃんとした言葉なのかは分からないが。ジンバにはそれで十分だったらしい。 「別に用など無いさ。ただなゲド、お前が難しい顔をして下らない事を考えているようだったからな」 「下らない事など考えてはいない……」 己の考えている事を下らない事などといわれたくは無い。ゲドは少し嫌悪の表情を表しジンバの方を見上げた。 「ほら」 手を差し伸べてくるジンバに、前にも同じような事があったなと思いながら素直に手を差し出してやる。 そんなゲドの手をとり自分のほうへ引き上げる途中で何を考えたのか、ジンバはわざと手を放してやった。 力を抜いてジンバの手を支えに立ち上がろうとしていたゲドは支えをなくして見事に地面に尻をつく事になった。 「突然何をする!?」 驚きと怒りの混じった声でジンバに抗議をしたが彼の笑い声にそれをけされてしまった。 「くっ…あはははははは、ゲド忘れたのか?前にも同じ事をしたはずなんだが。やっぱ り長く生き過ぎて忘れたのか?」 「……………」 (……長い年月……この世に生を受けてからかれこれ112年になる。長過ぎるうつろな日々だった。 これからも同じく単調な毎日が過ぎてゆくのだろうか………) 突然黙ってしまったゲドを見てジンバはため息をついた。 (しょうがないまたあの手を使うか?) などと思いながらジンバは早速、行動をおこした。 (………紋章に生かされているような日々に何の意味があるのだろう。 ライズのように永遠の生を断ち切る事が出来なら幾分か楽になるのだろうか…………ん?) 「…………んっ?」 突然の湿った温かい感触に驚いたゲドは自分の世界からジンバのいる現実に戻ってきた。 「やめ……ろっ……」 ゲドは抗議の声をあげるがジンバはその行為を止める事なく、最初唇をなぞっていただけの舌はいつの間にか 歯列をわりゲドの口腔内まで入りこんでいた。そして奥で縮こまっていたゲドの舌を絡め取り、不意をつかれる 事となったゲドはジンバに翻弄され行為は逆に激しくなるばかりだった。 「ふッ…んッ……、何をッ…?」 ジンバに思うように翻弄されていた行為は、ゲドが抵抗をしなくなってから終わりをむかえた。 激しい口付けを受けていたゲドの息は切れ、肌は薄らと赤みを帯びていた。 ようやくゲドの呼吸がおさまった時、それまで喋ることなくゲドの様子を見ていたジンバが口を開いた。 「ゲド……死ぬなんて、意味のない生だなんて……考えるなよ。お前がライズの生き方に憧れてたのは分かる。 けどな、お前はライズじゃないんだ。」 いつにない真面目な顔のジンバにゲドのかえす言葉が無くなる。 「……俺は50年前から、ライズに憧れる…いや、ライズに好意をよせていたそんなお前の事が好きなんだ。」 ジンバの視線が地面に落とされる。聞かされた言葉に驚く事は不思議となかった。 多分、自分は50年前からこの事実を知っていたのだ。 本人の口から聞くことがなくとも……。分かっていて知らないふりをしてきたのだ。 今まで……… 地に落とされていたジンバの視線がゲドのそれとかさなる。 「だから………ゲド、約束だ………生きてくれ」 それまで考えていたことを忘れたわけでは無いが、ジンバの言葉に何故か素直に頷くことができた。 「………分かった。本当の意味での死が訪れるまで、………俺はいつまでも生き続ける事にしよう。」 あの時の会話はこれからの事を予測して言っていた言葉だったようだ。ジンバは真の水の紋章を娘であるクリスに託して、 長い永遠の鎖から逃れる事になった。自分は……?と考えてみると何か笑えてきた。鎖から逃れる事も出来ず、 受け入れる事も出来ない。しかもジンバに "本当の意味での死が訪れるまで生き続ける" と約束までしてしまっている。行き場のない思いを持て余しながら、ゲドはいつもの仲間達との日々に戻っていった。 |
幻水3で、はじめて書いた小説なのです。何となく書きはじめたら出来上がってしまった のです……。そして、後書きというか、これデザイン変更するまで書いてなかったのですね。 他のものには書いてあったのに、ちょっと微妙な感じです。またいつかワイゲドに挑戦する事に いたしましょう。 |
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