○○くれなきゃ……

   

秋晴れ、とても天気の良い日。風は冷たいがゲドには気にならない程度のものだった。自室としてあてがわれた部屋で窓を全開にし心地よい風を背中にうけながら書類に目を通す。特にいつもと変わる事のない日常だったがこの天気がゲドを気分よくさせる。
そう、気分はとても良かった。嵐のようなあの人物が部屋に現れるまでは……

「ゲドさん、いますか〜?」

部屋の扉をあけると同時にその声は聞こえた。書類に目を落としていたゲドは憩いの時間が終わるのを残念に思いながら視線を人物に向ける。

そして、しばし無言が続く……

声の調子から今部屋の中へ自分を訪ねてきたのがヒューゴだとは分かる。が、目の前に立っている人物からはそんな事は全く分からない。本当に人なのかさえ妖しいものである。

「ヒューゴ……何を思ってそんな格好をしているんだ……?」

取りあえずその謎の格好の意味を本人に訪ねる。

「え?ゲドさん知らなかったんだ。俺、ゲドさんは知ってるかと思ってたんだけど」

みんな俺の事変な目で見るんだとヒューゴの声をした物体が続けて言葉を発する。

「……当たり前だと思うがな……」

頭をおさえ微妙な顔をするゲドは、ヒューゴであろう物体が特徴のあるものを持っているのが目にはいった。一度見れば忘れる事はないであろうそれは確かに昔みたことがあったものだった。

「もしかして…ハロウィン、か?」

「もしかしなくても、ハロウィンだよ。ゲドさん忘れてたの?」

ハロウィンの日には子供が思い思いのお化けの格好をし『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』といいながら家々を訪問する…本来は死者の魂がやってくるといったものだったはず。ここグラスランドでは無い習慣で、ゲドも随分昔に見て聞いた事のあるものだったのでハロウィンとは何であるのかよく分かってはいなかった。

「それじゃ、ゲドさんキス頂戴」

「………!?」

しばし考えに没頭していたゲドはヒューゴがとんでもない台詞を言ったのに驚き声を失った。そしてこれ幸いとヒューゴが己の唇らしきものをゲドのそれに近付けてゆくが、後少しというところで我に帰ったゲドがヒューゴを突き放す。

「何するんだよ〜」

「い、いや…キスしようとするお前が変ではないのか?」

変だ、明らかにおかしい。
ヒューゴは正しくハロウィンの事を理解していないのではないかと、そもそもヒューゴがハロウィンを知っている事自体がありえない。誰かに教えられなければ知り得ないことではある。
と、考えたゲドは思い付く。誰かが間違った知識をヒューゴに教えたのでは無いかと。

「ヒューゴ、ハロウィンのことは誰から聞いたんだ?」

少々機嫌をそこねたヒューゴはそのままゲドの問いに答える。

「ジンバだけど、それがどうしたの?……それよりさぁゲドさん、キス頂戴」

ゲドはその答えを聞き頭が痛くなってきたと手を額にあてた。あり得ない事では無い、ワイアットならハロウィンの事を知っていてもおかしくはない。話を歪曲して伝える事も。

「ハロウィンとはどう言うものか知っているのか?」

ゲドの言葉を無視する形で発せられた言葉に暫く答えるのを渋っていたヒューゴではあったが渋々といった感じで答える。

「俺らかもっと小さい子供が仮装して『キスくれなきゃいたずらするぞ』っていいながら好きな人のところへ行く日の事なんだってジンバが言ってた。だからそういう日なんでしょ?」

頭どころか胃までキリキリ痛んできたのを感じながら首を横に振ってヒューゴの言葉を否定する。

「え〜〜〜!?違うの?俺てっきりそういうものだと思ってたから今日のこと楽しみにしてたのに」

「楽しみになんてしないでくれ……」

頭をかかえながえら間違った知識を植え付けられているヒューゴに、正しい知識を教えなければいけないと心から思ったゲドは語り出した。分かりやすく、丁寧に。






「うん、分かったよ。ゲドさんそういう事だったんだね。ジンバが間違ってたのか。……でも」

「……でも?」

嫌な予感を感じながら同じ言葉を繰り返してみる。

「でも、キス頂戴」

いたずらなんてしないからとにっこり笑顔でヒューゴが答えをかえす。

「嫌だ、第一ハロウィンと何ら関係のないものだろう?」

「もう、そんな事なんて関係ないよ。俺は今ゲドさんにキスしたい。それともいたずらのほうが良いの?」

ゲドにはどちらも同じ事のように感じた。それでもいたずらの方がキスから比べれば可愛いものだと、思いヒューゴにその旨を伝えた。いい加減キリキリ痛む頭や胃から解放されたかったのである。
いたずらの本当の意味を知らずに………

「ゲドさん、いたずらが良いんだ。分かったよ。俺頑張るね」

と、いうのと同時にヒューゴは見にまとっていた妖し気な物体を脱ぎはじめ、準備万端といった様子でゲドの方をむくと勢いをつけてその物体をゲドの方へ投げた。驚くのはゲドである。突然、物体が我が身に降って来たのだから。そしてこの上にのしかかるヒューゴ……
危険信号を感じた。自分の身に危険が迫っていると。この危機的状況を回避せねばならない。しかし…何故だか体が思うように動かない。

「ゲドさんがいたずらのほうが良いって言ったんだよ?今さら止めるなんていわないよね」

もがくゲドに決定的な言葉を投げかける。ヒューゴの手が自分の体を弄るのを感じる。感じるがどうしても阻止出来ない……
おかしい、こんなことあり得ないそう思いながらゲドの意識はどんどん流されてゆくのでありました。

   

 ハロウィンです、なので書いてみました。今回は小説ですね〜何とかギリギリupは間に合ったような……続きで裏を書くかもしれないです。出来れば近い内に……近い内……

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