オブジェのような…… |
「…これは一体、何だ…?」 いつもの見なれた光景、しかし一つだけ見覚えのないこの場に相応しく無いものが自室として 使用している部屋の扉を開けたとき目に飛び込んできた。 実に奇妙な形をしたその物体は一種のオブジェのようにも見え、強烈な存在感を放っていた。 扉を開けたままの状態で突っ立っていてもらちがあかない為、異を決してその物体を 近くで見ようと一歩、また一歩と足を進める。 いつも以上に時間をかけ近付き目をこらしてみてみると、小さな物体の集合体だという 事が何となく分かった。その小さな物体が何なのか?をいうことが問題である。 見た感じでは丸い球体をしているように思える。色とりどりの小さな物体は窓から差し込む 光を反射して僅かながらに輝きをみせている。その輝きに思わず目を奪われ見つめていると、 「おい、ゲド、一体何してるんだ?」 突然背後から聞こえてきた声でゲドは悪戯を見つかった子供のような驚きをみせた。 「ワ、ワイアットかっ…突然、どうしたんだ?」 「おいおい、そんなに驚く事もないだろう」 最初の方は驚きで幾分上ずった声をしていたが、最後の方になると驚きが嘘のようになくなりいつもの 淡々とした口調に戻っていた。急な変わりように苦笑しながらワイアットはゲドが見つめていた ものに視線をうつす。 「しっかし、これは何だ?今まで見た事ないぞ、こんなもの」 いかにもな物体にうさん臭気な視線を向け、自分より先に見つけていたゲドに 一体何なのか視線はそのままで訪ねてみた。 「…知らん、部屋に入るとその机の上に置いてあった。丸い球の集合体である事は 分かるが、それ以上のことは……」 「分からない、か…」 ゲドの言葉の最後をワイアットが続けていう。2人で妖し気な物体に視線をやり、また 互いを見る。何度か繰り替えした後どちらからかともなく、もっと詳しく調べてみようという 話が出、取りあえず妖し気な物体を別の場所に移動する事にした。 「っと、これでいいだろう?」 随分重たいなとぶつぶつ言いながらワイアットが先にたって誘導していった。 結局落ち着いた場所はというとフィレス城2階、様々な像が飾られている部屋だ。 一番最初にゲドがオブジェのようだとワイアットに話したことからこの場所に決めたのだった。 台座に置いてみるとそれなりに見えるのだから不思議である。一見不揃いの丸い固まりも、 様々な色の重なりあった光の反射具合もまるで計算されたかのように様になっている。そっと 手を伸ばし一つを撫でるように触ってみると、見た目から想像するほどつるつるしていないことが 分かる。もう少し力を入れて触ってみると堅く接着していた物体の一つが軽い音をたてながら 台座から落ちてゆくのが分かった。 「……ッ!?」 奇妙な形をしたオブジェのような物体の一部を崩してしまったことに衝撃をうけたゲドは 手はそのままに固まってしまった。見た目からして妖しい物体だけに何が起こるか 予測出来ない。これが見なれたもっと別のものだったのであれば次の対処の仕方も すぐに考えられるというもの。そんなゲドとは正反対にワイアットは落ち着いていた。 床に落ちた球状の固まりをおもむろに目の前にかざしてじっと見ていたかと思うと 匂いを嗅いでみたりする。 「…もしかすると……」 「…何か分かったのか?」 ワイアットのおかしな行動が目に入り、何となく分かった雰囲気を出している。 その男に固まっていたゲドは訪ねてみた。 「あぁ、でもな……」 語尾を微妙に濁して答えるのを渋っているかのようなワイアットに疑問を感じ今一度 訪ねてみる。 「ワイアット、何か分かっているのではないのか?」 「いや、あれだという予測はついているんだが…確かな確証がないんだよ。」 (自分で試してみるのもあれだしな…) 聞こえるか聞こえないかの小さな声で続けていう。姑く謎の物体を持ち悩んでいた ワイアットは、そうしようと一度頷くと部屋の隅の方でまるまっている 風呂敷を背負った白い犬に向かって手招きをはじめた。 「ほら、そこの犬、いや、コニーいいものやるからこっちにきな」 そこの犬と言った時のコニーの表情、犬にあるのかは分からないが、怒りを含んだ ものに変化するものを感じすぐさま名前で呼んでやる。 「アウッ……?」 独特な声で吠え、呼んだワイアットの方へ向かう。ゲドには理解不能な行動だったが ワイアットにはやつなりの考えがあるのだろうと深く追求することをせず、 様子を見守る事にした。 近付いてきたコニーに視線を近付ける為しゃがみ、手のひらを口元で開く。 「…アゥ?」 物体を見ての疑問かは分からないがコニーは首を傾げる。これを一体どうしろと?と いうようにワイアットに聞いているようにも思えた。そのワイアットはというと、 「食えよ、旨いぞ?お前の大好きなナッシュだって食ってたんだからな。」 「…おいっ、誰も食べてなど……」 ワイアットのつく嘘に反論しようとしたゲドだったが途中で、謎の物体を持っていない方の 手で静かにするようにと合図を送られ仕方なく黙る事にした。 食えとねばっていると、何度か鼻をヒクヒクさせ匂いを嗅いだ後ワイアットの手のひらから 嘗めとるように口の中へおさめた。ややあってコニーの口の中からガリガリという気持ちの良い 音がもれ飲み込むのが分かった。 「……大丈夫なのか…?」 コニーのことである。元の妖しい物体を見ているだけにまさか食べれるものだとは 思わないゲドは声を潜めワイアットに聞いてみる。 「あぁ、大丈夫さ。ほら、見てみろよ?」 コニーの様子を見る限りワイアットにもっと欲しいとねだっている感じがしていた。 「ゲド、お前も食べてみるか?」 「い、いや……」 いくらコニーが食べていたとはいえ、出来るなら食べたくは無い。そんな思いで語尾を微妙に にごし、視線をワイアットからそらす。ゲドの様子を見ていたワイアットは仕方ないかと洩らし 手に持っていた物体を自分の口元へ持ってゆき、 「ん、やっぱりな…」 ワイアットが洩らした言葉を聞き視線を元に戻すと、口の中に何かを含んでいる 様子が見て取れた。驚愕で目を見開くゲドは何もいえずにワイアットを見ている。 「そんな顔で見るなって、甘くて美味しいぞ?」 「信じられん…、本当に食べ物なのか?」 あくまでも疑いの姿勢を崩さないゲドに焦れたのか、こっちこいよと頑なゲドを呼ぶ。 近付いたゲドはジッとワイアットの方を見つめている。すると素早くワイアットの影が 重なり唇を深くあわせる。 「…ッ!!ぅ……ん」 抵抗するゲドの手をおさえより深激しく唇をあわせる。と、ワイアットのものから ゲドのそれへ甘い異物が転がり込むのを感じた。 「っ、こ、これはっ……」 「な、甘いだろ?」 焦るゲドを前に嘘じゃなかっただろ?と笑ってみせる。ワイアットは自らも 異物の固まりに近付き一固まりを外すし、口の中へ入れた。 「おっ、これは別の味がするな」 色によって味が違うみたいだと、今だ困惑しているゲドに言う。するとゲドはため息をつき、 「……食べれる事は分かったが…、先程の行動の意味はあるのか?」 問うゲドにまったく悪びれもせず別に構わないだろう?と言ってのけた。そういわれてしまえば 反論する気も起きずゲドは、ただため息をつくしかなかった。 そして、忘れ去られた謎の物体は食べられるものとだけゲドに認識されたのだが ワイアットにはこれがどういったものなのか分かっていた。しかし、ゲドに教えるのも 何だか嫌な気がしてずっと黙りを決め込んだのだった。 その後、妖し気な物体は再びゲドの自室に置かれる事になり、訪れる者に 美味しいぞ?と進めるゲドの姿が何度か見かけられるようになったという。 |
ホワイトデー(←何時の事だよ?)ということで書きはじめたこの文、 なんとか完成いたしました。…でも謎が謎のまま(涙)このまま書き続けると いつまでもだらだらと続くような気がしまして強制終了をしたのです。ネタばらしというか、 謎の物体は一応飴玉の固まりです。誰が作ったのか?というのは御想像におまかせ いたします(笑) |
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