道しるべ |
疲れたオオカミ達は 少女の歌で眠る。 深く、心地よい夢をみる。 それぞれの良い記憶を楽園の影に重ね合わせ 幸せな 甘い夢をみる。 ダルシアの城から追われ、街中を彷徨う。 5人は追手を引きつれ、チェザを守りながら逃れようとしていた。 数時間彷徨い歩き漸く見つけた腰を落ち着ける事のできる場所は、 少し街中から離れたスクラップ置きだ。 草が程よく生い茂り、その中に埋没するいくつかの 乗り物だった残骸の中から、まともだと思われる 黄色の乗り物の中に入りこんだ。 「ここならバッチリだな。」 窓から顔をだし、キョロキョロと辺りを見渡したヒゲが くるりと顔を皆に向け言葉を放つ。 「連中の動きを掴んだら直ぐに戻る。」 ツメの言葉に続き、キバも残る二人にここで待つようにいうと、 3人はそれぞれバラバラに黄色の乗り物を飛び出した。 冷たい風が体を横切るのを感じる。 見つからないように、人目につかない場所を選び偵察を続ける。 細い裏路地だとか、建物の上だとか。 こちらからは手に取るように見える相手の様子だけれども、 相手側からはこちらの様子など、うかがい知る事など出来ない。 そんなちょっとした優越感や見つかるかもしれないというスリルが 堪らなくイイと感じる。体の奥底から沸き上がる感覚。 自然と一体になったようなその感覚。 全くの別物ではあるが、チェザの歌で夢見たあの時の思いと どこか、かさなるものを感じた。 「お前はっ !!」 「……!!」 思考を破るかのように聞こえてきた声は、 明らかに自分が見つかった事を知らせている。 オオカミの身の軽いステップで直ぐに踵を返し、その場を後に走り出す。 敵の放つ衝撃波が体のすぐ横を掠め、飛び移ろうとしていた瓦礫の山を 綺麗に粉砕してゆく。 ここで捕まるなんてたまったもんじゃ無い。 同じく、後から後から襲ってくる衝撃波を素早い動きでかわし数秒後、 どうにか追っ手をまく事が出来たようだ。 「ったく、最近調子狂いっぱなしなんだよ。」 とか何とかブツブツ呟きながら道を進む。勿論、周囲に注意を払う事は忘れちゃいない。 "良い夢を見た?" ふっとチェザの言葉が頭を過り顔をしかめる。 あんなのは良い夢なんかじゃない。ただ、たまたま見ただけの在り来たりの夢。 良くもなく、悪くも無い普通の夢。 「…どうかしてる。」 「何の事をいってるんだ?」 何時の間にかキバがそこまで来ていたらしい。 気配を殺した歩き方で近付いてきたのであろう。 奴を前にすると、何だか無性にイラつく、理由なんてヤツが奴であるということで十分だ。 「何でも良いだろ?お前には関係ない。」 周りに誰もなく、二人ということで普段抑制している分、口調は更にトゲを含んでいる。 「…かわいいと、思ったんだ。」 「…はぁ?」 意味が分からない。先程の自分の言葉に繋がっている訳でもなく 今この場でその言葉を出されることがおかしい。 大体、何に対して"かわいい"と思ったのかさっぱりだ。 「チェザの歌で気持よさそうに眠っていたおまえが、何だかかわいく思えた。」 ものの数秒後には、キバの口から誰に対して思っていたのか知れた。 だが、知らない方が良かったと即座に後悔する。 「はっ、オマエ目腐ってんじゃねぇの。」 「オレは…まともだ。真剣にいってる。」 キバの澄んだ視線を感じる。真直ぐ捕らえて放さない、強い強いそれ。 声はださずに、瞳が雄弁に語っている。 居心地が、悪い…… 「オレはもう行くさ、じゃあな。」 くるりと踵を返し歩き出すが、一向にキバの気配が消えない。 タッタッタッ‥‥ 足音だけが周りにこだまする。二つの違う足音。 「ツメ………」 後ろから自分の名前が呼ばれるが気にしない。 いや、気にしないようにしているのかもしれない。 以前と違う心の変化に少し自嘲の笑みを浮かべる。 曖昧な判断などせずに、ばっさりと切り捨てていた筈だ。 心の底から気にしていなかった。気にするという言葉さえ忘れていたように思う。 「うるせぇな、なんだよ?」 ほら、後ろを振り向いてヤツに話しかけている。 「ツメは、どんな夢を見たんだ?」 下らない事を言ったら一言罵声を浴びかせ、すぐにでもこの場を後にするところだ。 だが、キバの言葉を聞いて拍子抜けした。 下らない事に間違いはないのだが、予想の範囲外だったのだ。 答えなど用意していないから、ただ黙るしかない。 「ツメ、聞いているのか?」 「あ、あぁ……。」 先程までのイラつきはどこへ言ったのか、 どうやら拍子抜けしたのと一緒に、どこかへ消えてしまったようだ。 こんなところで話していると、いつ追手に見つかるか。 見つけて下さいと言っているようなものでもある。 二人は人目につかない道の奥まった場所に、一旦腰を落ちつける。 「お前はどうなんだよ。」 すぐに、いつもの調子を取り戻しキバに聞き返すも、 返ってくる言葉はただ一つ "覚えていない" そんな事ないだろうと再度問いつめてみるが、 答えが変わる事はなく、話せと促してくる。 話せ‥‥、覚えていない‥‥ 同じ事の繰り返しをしているうちに、何だかどうでも良い気分になってきて つい、ポロリと口を滑らせた。 |
04.07.02
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ウルフ、第2弾デス。ヒゲは一応登場したとはいえ、きっとキバとツメが殆どになるかと。 私の大好きな歌をイメージして書いているつもりなのですが、全く別物に。(涙) 悲しい事です。恐らくあーんなことや、こーんなことはしません。 いつかきっと………と、いうことで続きます。 |
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