思心-04 |
朝の清々しい空気、風を感じて歩みを進めていると 昨夜の考えがまるで嘘のように、随分前向きな思いに変わっていることに気がつく。 人の気持は変化しやすいもの。大本はゆるぎがなくとも、小さな事は絶えず変化を続ける。 だからこそ、アイツとのことも決着をつけなければならない。 そう思ったからこそ、ここまで出向いてきたのではないか。 決意は変わらない。時を止めていた自分に終止符をうつため、 そして恐らく、同じく時を止めているであろう「彼」にとっても必要だと思えるから。 己の勝手な思い込みだ・・・という自覚はあるが、そうだとも言い切れない。 要は伝えたいのだ。今の自分の姿を、心の有り様を。 彼、、エースを思う心を。 カタンッ 「・・・?」 何か聞こえたような気がした・・・ 意識の底に沈んでいたエースは微睡みから覚醒へと浮上するが、 こんな辺鄙な場所へは誰も来やしないと頭をかすめ、再び下降する。 何より眠っていたかった。 しかし、差し込む陽光が珍しい訪ね人のおとずれを確かに知らせていた。 「・・・・エース・・、なのか?」 「・・・ッ!!!!!」 聞き間違いではないだろうか。目の前にいる彼の人の声は、姿は、、 夢の続きなのではないだろうか。 微睡みは瞬時に解け、だがしかし余りにも衝撃が大きすぎて 声を出す事すら出来ない。 ただその場で固まるエースに、一歩一歩ゲドが近づいてゆく。 「・・・エース」 懐かしい香りがエースをふわりと包み込む。 そして・・・力強い腕が背中に回されるのを感じた。 「た、大将・・・・どうして・・」 「お前に伝えたいことが、聞いてほしい事があって来た。」 混乱しているエースに静かな口調で語りかける。 「あれから随分経つな・・・。エース、今更かもしれんが俺は、、」 俺は、、、 「俺が、どうかしたんですかい?」 そっと、後ろにまわされた腕を外す。 この十数年、忘れようとしても忘れられなかった、 焦がれ続けたゲドが目の前にいる。 ぬくもりを感じる。息づかいを、鼓動を、声が心の琴線を揺り動かす。 再びまみえる事が出来て嬉しいという想いは、激しく身のうちにあるが、 それとは別に、何故、今になって姿を見せた?という感情も燃え盛っている。 ゲドが姿を消した、あの時の想いが、 激しい後悔と己の無力感、そして少しの失望。怒りの感情。 そんな想いが、止まっていた感情を押しのけるように吹き出す。 もっと別の、嬉しいと感じた想いを伝える言葉をかけようと思うが、 口をついて出るのはもっと別の残酷な言葉。 「大将、アンタには話す事があるかもしれないですが、 もう構わないでくれないですかね。俺にはもう、アンタの事なんて関係ない。 聞く義理なんてないと思いませんか?」 「エース、、? 何を、、、」 「本当に今更ですぜ? 大将、アンタが十二小隊の前から、俺の前から姿を消したあと どんだけ探したと思ってるんですかい?どんだけ後悔したとっ!!! 随分長い時間でしたぜ。忘れよう忘れようとしても アンタの事が忘れられない。俺はね、大将、もう疲れたんですよ 忘れられずにいる時間が。そんなアンタが、今目の前にいる。 だから、もういいんですよ。どうでもいい、、、 アンタが何を思ってようが、言おうとしてようが関係ない、んだ 大将、本当に、、、、どうして、ここにきたんです、、?」 消え入るようなエースの言葉にゲドの口が止まる。 言おうと心に決めてきた言葉が何も出てこない。 再び歩み寄り手をかけようとするが、くるなっ!という、 エースの拒絶がゲドを揺さぶる。 「エース、、聞いてくれ、話さなければいけないんだ。 お前に聞いてもらわなければならない。」 「だから、大将?もう遅いんですって。 アンタの考えている事なんて関係ない」 どんなに残酷な言葉を紡いだとしても、根本が変わる事はありえない。 エースは、思う、早くこの場から去ってくれ、 このままでは、もっと残酷な言葉を向けてしまいそうだ、と。 「そう、、だな。エースには、、関係ないのかもしれない。20年近くだ。 長い時間だったのも分かる。今更というのも分かる。 だが、聞いてほしい。俺の思いを、心の有り様を」 二人の間を静かな時間が流れ、互いの瞳は交差する。 それは彼らにとって、昔に戻ったかのような錯覚すら感じさせるが、 もう、あの頃のままでない事は、はっきりと自覚している。 「あの頃から、、変わらない。俺の思いは、 はっきりと言う事はなかったが、、お前のことは、、、」 「やめてくださいや。お願い、、ですから、これ以上の言葉は そうでないと、俺はっ!!!」 再び視線が交差する。だが、静かな時間はない。 あるのは激情だ。激しい思い。心うちに押し殺していた、思う心。 「エース、、愛している。」 見開かれる瞳、震える唇、硬直する体。 そして、鮮やかによみがえるゲドと共にあった頃の記憶、 別れた後の辛い記憶。 止まっていた時間が動き出したかのような感じがした。 「大将、、ずるいですぜ?、、、、何でその言葉を言ってしまったんですか もう何も言えないじゃないですか。 だから、あんたってひとは、、、、、、、」 『おれも、、愛してます』 心内に秘めておくべき言葉だった筈なのに、ゲドに言われてしまっては 無理な事。反発するばかりだった言葉はどこへいったのか 今は、素直な気持ちが口をついて出る。 本当に伝えたかった、伝えたいと願っていた言葉が 音になって目の前の愛しい人に届いてゆく。 これが、どんなに幸せな事かなんて、ゲドには分からないだろう。 「大将? もうどこへも行きませんよね? オレの前から、、、消えるなんて事しないでくださいよ?」 離れていた心が、距離が一つになる。 「あぁ、、、俺はそのつもりだ」 今まで見てきた中で一番の微笑みが、表情に現れている。 それはエースからみたゲドの表情だけでなく ゲドからみたエースの表情も同じ。 あぁ、、、、 ゲドは思う。世界はこんなにも鮮やかだったのか、、と。 失った筈の色が、洪水のようにあふれてくる。 もう、色が無くなる事はない。 思う心がつながっている限り、世界は色に満ちている。 エースは思う。これは、自身の願望が見せた夢なのではないか?と。 だが、抱きしめた温もりが現実を知らせている。 もう、二度とこの手を離すことはない。 自分が生きている限り、沢山の表情を愛しい人に。 再びまみえた二人のもとへ静かに夜の帳が下りる。 長い空白の時を埋めるかのように、灯された明かりは消える事無く 優しい夜は更けてゆく。 |
10.04.25 |
長い時間をかけてしまい、アレな感じですが、、、、 漸く完結でございます。数行書いて、放置、、、を繰り返していたので、 所々、文章おかしな部分がorz これで完結させてしまっていいのか?と、疑問を感じるところではありますが、 お二人の話は、これからも続いてゆくので一旦終了でございます。 機会がありましたら、続きも書くのだろうと思っておりますが。。。。 いつになる事か。 長い間おつきあいいただきまして、ありがとうございました。 |
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