冷夜-04

   
「ゲド達、上手く逃げる事が出来てると思うかい?」

バラバラに逃げた小隊のメンバーが決めていた場所に集まり始めて数時間たつ。
時間がたつにつれ仲間達が集まってきていたが、ゲドとエースの姿だけが見えない。
いつもは一番最初に落ち合う場所についている筈の彼等だ。
それなのに……不吉な予感が頭の中を過る。
あるはずのない事だとどんなに思っていても、
もしかしたらという思いがどうしても不安な気持にさせる。

「大丈夫じゃろう。そのうち何ごとも無かったように戻ってくる。」

そう断言するジョーカーではあるが、口調に不安な気持が現れている。
どんなに大丈夫だと思っていても実際に目で確認しないかぎり、
心からそう思える事はないのだ。

「俺も……大丈夫だと思う。」

皆、不安な気持を抱えている。心配する気持を共有している。
その口に出さない思いが叫び出したくなる気持を抑えていた。
時がたつ。変化してゆく空の様子や落とす影が日が落ちる頃だと告げる。


探しに行こう。そうそれぞれが思い、腰をあげようとした時に
薄らと二つ影が進んでくるのがみえた。
近付くにつれ、待っていた人物だという事が分かる。

「ぉ〜ぃ……お〜い!!」

「馬鹿みたいに、手振ってるよ。」

クイーンは呆れ、心配して損したという思いの片隅にどこか安心した思いを抱いた。

「まったくじゃ。殺しても死なんとはエースのような奴の事をいうんじゃな。」

「俺も……」

「てめぇら、人がいないからって好き勝手言うんじゃねぇ。」

ジャックの言葉をエースの馬鹿でかい言葉が遮る。

「おや、聞こえていたのかい?呆れる程の地獄耳だねぇ。」

ようやく戻ってきた。ゲドはそう思う。安心して戻るべき場所があるという事が
どんなに良いものか身にしみて感じる。

「……隊長…傷……。」

ジャックの言葉に皆、ハッとなる。着ている衣服はぼろぼろだったとしても、
あまりにもいつもと変わらない姿だった為、忘れていたのだ。
ゲドが酷い傷を負っていたという事を。

「そうだよ、ゲド、傷はどうしたんだい?無理してるんじゃないだろうね。」

皆の視線を感じて重い口を開く。

「傷は…治ったさ。森の中で不思議な老人に出会ってな。薬を分けてもらった。」

「そうですよ、大将。あのじいさんは一体、何だったんでしょうね。」

二人の会話に皆、興味深々だ。そして、エースに話を促す。

「それがな………」




短いようで、長い話を皆に聞かせ終わった時、
周りはすっかり黒を纏い、夜に姿を変えていた。
いつの間にか誰かが起こした火が音をたてて崩れる。
明々と照らされる皆の顔。一言ジョーカーがぽつりと声をだす。

「民話じゃ。」

「………?」

その一言に疑問を感じる。何の事だろうと。

「お前さんの話を聞いていて思い出したんじゃ。この辺りの民話をな。」


森の中に小屋がたっている。その中で休んでいると、老人が一人訪ねてくる。
その時、その時にいう事は違うらしいが、親切にしてやると
悩みを抱えているは助け、そうで無い人には幸福を与えるという。
逆に親切にせず、邪険に扱うと災いを招くらしい。


「そうか……だから追手の影が見えなかったのか。
上手く行き過ぎてると思ってたら案の定、そういう事だったのかよ。」


突然消えてしまった小屋の前を出てからは、順調に事が運んだ。
傷を負っていたゲドは回復していたし、
エースもどういう事か、あった筈のかすり傷が消えてしまっていた。
そして、姿を表すかと思われていた追手の姿が少しも見えない。
順調にいくことを喜びながらも、二人は不自然な思いを感じていたのだ。


「でも、良かったじゃないか。あたしは、エースの事だから
てっきり邪険にしたんじゃないかと思ったよ。」

その言葉に、エースは拳をふるふると震わせる。

「クイーンっ!このエース様がそんな事する筈がないだろうっ。
そりゃもう、親切に、止めてくれといわれる程に親切にしたさ。
どこかのエセベジタリアンや酒のみジジイとはココが違うんでね。」

指でどうだと言わんばかりに頭を指し、挑発の言葉を口に出す。

「おぬしだけには言われたくないわっ。」

「そうさ、エースだけには言われたくない言葉だよ。」

挑発された二人が反論し、いつもの言い合いが始まり、
ジャックの噛み合わない突っ込みが加わる。
そして、ゲドは微笑みをみせる。





あぁ、これがいつもの日常。
冷たい夜が嘘のよう。
暖かい光を心許せる仲間達と囲める
この時が続きますよう………



  04.04.17  

あぁ、終わりました。……長かったです。書いていて辛いものもありましたが、
楽しかった感じも。エーゲドと思いながら書いていたと言うのに、
最後は十二小隊でしたよ。十二小隊はゲドさんの心のよりどころデス。

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