思心-02

   

とにかく、先を進もう。
歩みを進める、ゆっくり確実に。エースがいる小さな村へ。





















俺は、長い長い、夢を見ているのか……。



この小さな村へ辿り着いてから何年たったのだろう。
時間は止まってしまった。自らは変わらないというのに周りだけが変化を続ける。
何もない住処へ一度だけ、昔仲間と呼んでいた人物が現れた。
数十年という年月を重ねた姿は、青年だった面影を残しながら
精悍な一人の男として成長を遂げていた。
そう、周りは変わってゆく。己だけが過去のまま取り残されてゆく。

「いや……年月を重ねたくないのか。」

村外れにあった小さな小屋は勝手に己の住処とした。
文句を言うものはいない。他のことに無関心なのか、おおらかなのか…
どちらでも良い。余計な詮索をせずにいてくれるのなら。
何をするでもなく一日中小屋に閉じこもり、外の様子を映す窓を見つめる。
ヒゲは伸び放題。髪も同じくだ。
自分は、何故この場所にいるのだろうと疑問を感じることもあった。
十二小隊のエースとして各地を転々としながら暮らしていたのではなかったか。
とても大切な人がいた。最初は良く分らない人だった。
人となりを知ることによって、どんどん惹かれて行くのを感じた。
ただ人ではない、その人を愛するようになった。
感情表現の苦手なあの人の色々な姿が見たくて、随分無茶をやらかしていた。

その無茶は無意味だったのか?
彼の心には一瞬だけで、永遠にはならなかったのか。
だから……
あの戦いの後、皆を…俺をおいて煙りのように姿を消したのだろうか。
だとしたら、なんという無駄な事だったのだろう。彼のために費やした時間で
どれだけ別の有意義な事が出来たか。

……本当に無意味な事だった?

「大将…あんたは何故…?」

呟いても答えてくれるものなどいない。
たった一人で住んでいるこの小屋に誰も好き好んできやしない。
俺がこの村の人間だとしても、やっぱり近付こうとは思わないだろう。

死人の言葉だ。
朽ちてゆくだけの屍の言葉。永遠を生きる彼にはおそらく無縁の……
ただ人である自分だからこそ与えられる言葉だ。
今でも、彼が少しでも己のことを思ってくれているのであれば
これ程効果的な復讐は他にはないだろう。
彼には与えられる事のない『死』という最終到達点の地へ、俺は向かうのだから。

けれど、もう良い。何も考えたくない。
この場所を最後の安息地として月日を重ねてゆくだけだ。
もう、何も考えない。 眠くなってきた。
今はもう眠ろう。何も考えずに。
























葬列がゆく。
エースがいる村へ、あと1日と迫ったその日、野宿をするゲドの前を
表情を無にした人々が通り過ぎる。月明かりを浴び浮かび上がる列は
この世のものとは思えない雰囲気をただよわせる。
どんな人物がなくなったのか。
詮索は厳禁だと、そう考える事を拒む思いと同じくして
知りたいという興味が己の内に湧いてくる。
人の死など、戦いに身を置いていた自分、ましてや人一人の
一生以上に生を紡いでいるこの目で何度も何度も飽きる程にみてきたはずだ。
己が傍らに存在を感じる程に。思考の泥沼に陥りかける自分を感じ、
今はそれを止める人物が傍らにいないのだと思い出す。
紋章をこの身に宿す前は、無駄に考える事をしなかった。
止める者は必要なかった。いや、今思えば考えてはいたのだろう。
考えていないという殻をまとい強い己を作り上げていた。
だが殻はいつかは壊れる。それが紋章を宿した後だったというだけのこと。

姑くの後、ライズやワイアットと出会い行動を共にするようになり
彼等が歯止めとしての役割を果たすようになった。
そんな事を話そうものなら、役割なんて果たした覚えはないと
呆れ口調で言葉を返されるのだろうが。


思考はどんどんと今に近付いてゆく。
湖を見渡す城での2人との別れ。あても無く町を転々とする日々。
砂塵舞うカレリア、傭兵としての毎日。
長く留まる事になったのは単なる気紛れ。
特に理由なんてものはない。





そして…、エースという人物に出会った。


  06.06.19

ぐだぐだと長い語りになってしまいました。upした内容自体は短いですが、
会話が無い、と。もう少し書き進めてから?とかまたもや思ってみたり。
2人にどう決着をつけようか悩むところであります。

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